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第3章 日本の家庭用レギュラーコーヒー市場の特質|世界第4位 日本のコーヒー市場の変遷と特質 ~輸入と消費~

世界第4位の市場規模を誇る日本のコーヒー市場は、世界でも例を見ない市場の特質と消費者嗜好があります。本稿では日本のコーヒー市場に着目し、細部にわたる市場分析から、日本のコーヒー市場の特質と特有な消費者志向を四章構成のレポート形式でお伝えしていきます。

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▼▼▼前回の復習▼▼▼

yusuke-k.hatenablog.jp

 

3章では、近年伸びている家庭用レギュラーコーヒー市場の成長要因と市場の特質について考察する。家庭用コーヒー市場ではインスタントコーヒーの需要が停滞し、1990年代からはレギュラーコーヒーの需要が伸びている。一般に、その要因は本格的な味を求める消費者嗜好によるものと言われている。ここでは、家庭用レギュラーコーヒー市場の成長要因と市場の特質について考察する。

 

製品形態別需要の変化とその要因  (3-1)

 

製品形態別需要  (3-1-1)

 家庭用レギュラーコーヒーの製品形態は、以下の4つに分類される。

缶詰

 元々は輸入品の製品形態として利用されていた。1970代にアメリカからのMJB、ヒルスなどの製品に使用。

焙煎豆

生豆を焙煎した製品で、飲むためには粉砕して粉にしなくてはならない。1970年代には焙豆の生産が大部分を占めており、百貨店や喫茶店で挽き売りしており、焙煎業者も何らかの形で関与していた。1970年代からこの形態は生産量が多く、今日に至るまで大きな変化をもたらすことなく消費されている。

袋詰

1990年代から製品の劣化防止や長期保存を可能にするなどの工夫をするために、アルミや樹脂フィルムなどを使用して袋入りの製品が販売されるようになった。袋詰の普及はとても急速なもので1990年代後半では一番多い生産量となる。

簡易

粉がフィルターにセットされた状態で販売されているもので、お湯をその中に入れるだけでコーヒーを抽出出来、簡便でかつ美味しいコーヒーが飲める商品である。

 

 

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家庭用レギュラーコーヒーの生産量と金額を上の図14に示した。1985年から1994年までは缶詰と炒り豆を中心として生産していた。その期間においての缶詰め型の製品の生産量は急増しており、約10年の間でおよそ3倍である。1990年代の後半は、UCCキーコーヒーの大手焙煎業者の2社が家庭用レギュラーコーヒー「キリマンジャロ」という袋詰め商品を販売し、袋詰め製品が缶詰に変わって消費の急増に繋がっている。

1990年代以降の袋詰の製品がかなりの速さで普及したことが分かる。1994年にはわずか5,000tだったのが1997年には27,000tとなっており、3年間で約5倍生産量が増加している。更に2010年には50,000tを超す生産量となった。逆に缶詰型の製品の需要は衰退していった。缶詰製品はほとんどが400g以上の大容量タイプなので、価格もそれ相当の値で販売されている。缶詰に使用される豆の質は、次の第2節(1)で述べるコマーシャルコーヒーやローグレードコーヒーに位置でけられている豆が多く使用されているため、本格的な味や香りを楽しめるとは言い難い。大容量でも価格が高く品質も下がることが消費者を引き付けられなくなった原因となり、消費低下につながったと考えられる。

そして、袋詰め製品が増加した要因として、缶詰よりも少量で価格も安く、さらに容器包装に様々な工夫がされているため、品質が生産から消費者が飲むまで品質を保つことが出来、美味しく飲めることが大きな要因の1つである。

また、少しずつではあるが簡易型製品も94年から2012年までの長期に渡り徐々に生産量が増加傾向にあり、これ以降も伸びていくことが期待される。特に簡易型はお湯を注ぐだけで手軽に淹れることが出来て味や香りもしっかりしているため、朝の時間の無い時やオフィスで飲む時などの忙しい時でも手間がかからず、簡単に美味しく飲めるようにという顧客ニーズに応えた製品であるためである。

 

需要変化と加工メーカーの製品開発  (3-1-2)

レギュラーコーヒーは、ペーパーフィルターやドリッパー等の道具も必要で、手間もかかるにも関わらず、近年ではインスタントコーヒーよりも需要が大きくなっている。  

消費者嗜好の変化の要因は、良質なものを求める消費者が増加したことといえる。その要因は、需要変化に対応した加工メーカーによる製品開発によるものである。市場シェアトップのUCCは、1999年に家庭用レギュラーコーヒー「焙り豆 紙缶 150g」を発売した。それまでは内容量が200gだったのを150gとし、その代わりにより高品質な豆を使用して販売した。更に、容器に表示される情報も「味わいチャート」を記載し、苦味や酸味などの強弱といったその製品の特徴を消費者に分かりやすく伝えられるように工夫している。UCCはこれを家庭用製品の主体とした。  

同じようにキーコーヒーも1999年に「季節限定珈琲 キリマンジャロ アル―シャAA」というそれまでよりも高品質な豆を使用した製品を発売し、翌年には「キリマンジャロ タンザニアAAプラス」を発売した。

包装されている袋にはUCCの製品と同じように製品の特長を以下のように分かりやすく記載している。

「アフリカ最高峰の裾野で育てられたキリマンジャロコーヒー。その味わいは豊かな香りと酸味、深いコクが特徴です。“AA”は、タンザニアのコーヒーオークションにおいて、大粒で良質な生豆に付けられるグレードです。その中で更に味覚面に優れている生豆に対して“プラス”という格付けがされています。」※4

*1

このように、豆の生産地、香味、品質、格付けなどを詳しく消費者に説明しており、高品質な豆を使用した製品を家庭用製品の主体にしようとした。  

以上のような製品が、UCCキーコーヒーを皮切りに1990年代後半からその他多くのメーカーからも次々と販売されるようになり、家庭用レギュラーコーヒー市場の規模は大きくなっていった。消費者も製品に記載されている情報などが豊富なため、消費者自身もコーヒーに対する情報や知識を豊富に持つようになり嗜好が変化していった。企業のマーケティングにおける表示の工夫や近年における情報の豊富さ、又、コーヒーの知識の増加により消費者も多彩な情報や知識を持つようになったことが消費嗜好の変化に繋がっている。

 

家庭用レギュラーコーヒー製品の特質  (3-2)

 

製品の品質評価とコーヒー豆の階級  (3-2-1)

下の図15はコーヒー豆のランク付けの階級を表したものである。スペシャルティコーヒーとサステイナブルコーヒーの原料豆は、超高品質で他の原料豆と完全な製品差別化をしているために国際相場による価格への影響が少ない。

プレミアムコーヒー以下の原料豆は、国際相場によって価格変動が起こる。

 

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図15 日本のレギュラーコーヒー市場の多層構造

1番上の階級であるスペシャルティコーヒーは1978年にフランスで開かれたコーヒー国際会議で、アメリカのエルナ・クヌッセン女史が「スペシャルティコーヒー」という言葉を初めて使用したことがきっかけとなり世界中に広まった。

スペシャルティコーヒーに限っては、主要輸入国又は地域によってそれぞれ定義が定められている。以下はそれらの定義を示した。

スペシャルティコーヒー

SCAJ(日本スペシャルティコーヒー協会)

「消費者(コーヒーを飲む人)が手に持つカップの中のコーヒーの液体の風味が素晴らしい美味しさであり、消費者が美味しいと評価して満足するコーヒーであること。風味の素晴らしいコーヒーの美味しさとは、際立つ印象的な風味特性があり、爽やかな明るい酸味特性があり、持続する珈琲感が甘さの感覚で消えていくこと。カップの中の風味が素晴らしい美味しさであるためには、コーヒーの豆(種子)からカップまでの全ての段階において、一貫した体制・工程・品質管理が徹底していることが必要である。 (From Seed to Cup)」

 

SCAA(アメリスペシャルティコーヒー協会)

定義としては定めていないが「教育と情報交換を通じてすばらしいコーヒーを育成すること」という概念を持つ。

 

SCAE(ヨーロッパスペシャルティコーヒー協会)

定義は日本と同様に「From Seed to Cup」として定められている。

 

上位2位のコーヒーであるサステイナブルコーヒーは、各国又は地域で異なる定義を持つようなことはないが、生産国の殆どは発展途上国であり、それらの国の経済問題、社会問題、環境問題を解決するといった目標が定められている。  

 

サステイナブルコーヒー

コーヒー産業を持続させるsustainable(持続可能な)という言葉を用いており、コーヒー生産に関る人々の生活水準の向上やコーヒー生産の場である自然環境の保全に貢献する目的で生産され流通するコーヒー。2001年から2004年までのコーヒー危機がきっかけに、このコーヒーが誕生した。コーヒー危機ではコーヒーの過剰生産が起こり、消費者は安い価格で入手できるが生産者はコストを下回る収入しか手に入れることが出来ず、生産者と消費者の間、またそれまでのプロセスであるサプライチェーンに歪みが生じた。そのため、生産者と消費者が共に繁栄していくことを目的としサステイナブルコーヒーが誕生した。

この種のコーヒーは主に生産国に焦点が当てられている。生産国において、多くの生産者が貧困層になっているという経済問題、コーヒー生産のための過度な森林伐採や農薬や化学肥料による土壌汚染などの環境問題、不当に安い賃金で農園労働者を働かせたりするような社会問題、これら3つ問題の解決である。

以下3つのコーヒーは、はっきりと定義が定められている訳ではないが、それぞれ最終製品に適したものが利用されている。  

プレミアムコーヒー

 スペシャリティコーヒーやサステイナブルコーヒーには及ばないが、品種や産地の特性など豆が持っている個性を感じることが出来る高品質なコーヒー。

コマーシャルコーヒー

 上位3つのグレードのコーヒーとは評価基準や評価方法が異なり、安価で取引されている。日本で1番多く流通しているのがコマーシャルコーヒーとなっている。味や香りの均一性が求められる。

ローグレードコーヒー

 缶コーヒー、インスタントコーヒー、リキッドコーヒーに使用されている。また、コーヒー菓子などの加工用にも用いられる。

 

高品質商品の流通  (3-2-2)

第2節 (1) で述べたようにコーヒー豆はランク付けがされており、一番上にランク付けされているものがスペシャルティコーヒーと呼ばれている。

日本ではこのスペシャルティコーヒーは2003年に設立されたスペシャリティコーヒー協会によって普及した。それ以前はプレミアムコーヒーとランク付けされているものが主要となって国内で流通していた。このプレミアムコーヒーはスペシャルティコーヒーよりは品質は劣るが味や香りがしっかりとしており本格的なコーヒーとしては十分に満足することができ、高品質な豆として扱うことが出来る。欧米のコーヒー市場ではプレミアムコーヒーよりもグレードが低いコマーシャルコーヒーが主要となって市場を流通している。グレードが低いため品質は劣り価格も低い。プレミアムコーヒーやその上にランク付けされている豆はニッチ(隙間)として流通している。

スペシャルティコーヒーの普及以前から主要となっていたプレミアムコーヒーでさえ高品質という枠組みに入るので、日本市場と欧米市場を比較すると日本市場の方がハイグレードな豆が流通しており、日本市場の大きな特徴の1つであるといえる。 日本で流通しているコーヒー豆は、価格の面で世界の国々と比較しても価格が高いことが分かる。次の図16は主要国の焙煎豆小売価格を比較したものである。

日本の小売価格は、1位イタリアに次いで2位となっていることが分かる。この要因としては、従来の小規模喫茶店の取引力の弱さ、世界的に見て高い日本の人件費や土地代など様々であるが1番大きい要因としては日本市場では高品質の豆を主要としているため、それだけ多くの高品質な豆を流通していることが挙げられる。

また、日本市場で高品質商品が多く流通している要因として、日本人の国民性という観点からも説明できる。外国人に比べて日本人は「浄土」と言われる清らかで穢れが無いものという独特な美的意識を古くから持っており、これが品質の良いものを好む要因であるともいえる。

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スペシャルティコーヒーの売上を見ると、更に高品質商品の需要が近年高まっていることが分かる。

次の図17は、商社、焙煎業者計34社を対象に日本スペシャルティコーヒー協会が作成した資料である。この調査報告では近年のスペシャルティコーヒーの売上げが、34社中25社が増加したと答え減少したと答えたのがわずか5社となっている。更に今後の売り上げ予測については34社中30社が増加すると回答したとされている。

スペシャルティコーヒーは、殆どが袋詰めで販売され(主に通販やコーヒー豆専門店などで袋詰めで販売されており、スーパーや量販店では販売されていることは少ない)、値段も高く品質も良い。

このようにスペシャルティコーヒーの売上が近年伸びていることから、高品質商品が多く流通していることがいえる。またこれと同時に消費者は高品質を好むようになったことと、こだわりを持った消費者が増えたのではないかともいえる。そして、最終的には家庭用レギュラーコーヒーの生産量増加に繋がっている。  

 

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製品の価格は生産地の天候、国際相場など様々な要因がある。国内の価格形成は、次の図18に示したいくつかの取引によっても新たに価格が形成される。国内における価格形成はほとんどが発展途上国である生産国にとって経済的に不利にさせる場合や不公正にさせる場合があるため、とても重要なものとなる。そのため、消費国である日本市場はそれぞれが自身の経済的利益を過大に追及し、生産者から安すぎる価格で仕入れ、消費者に高すぎる価格で販売するようなことは望ましいとは言えない。しかし、日本のコーヒー市場は品質の良い豆を主流に流通しているため、過度な利益を得ようとしなくても、最終消費者に対する販売価格が高くなってしまう。また生産から消費に至るまで、品質管理等のコストもかかるので、流通においての各過程の取引は重要である。

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製品種類の多さ、多様性  (3-3)


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表10 POSデータ
  メーカー(全58) 金額 売上シェア 製品数
1 UCC上島珈琲 21,897,802 31 67
2 味の素ゼネラルフーヅ 18,094,423 26 42
3 キーコーヒー 10,416,617 15 45
4 片岡物産 3,401,434 5 12
5 小川珈琲 2,565,857 4 23
6 ネスレ日本 1,802,087 3 7
7 名古屋製酪 1,649,581 2 10
8 国太楼 1,289,867 1.84 7
9 藤田珈琲 955,885 1.37 13
10 日本ヒルスコーヒー 858,713 1.23 19
11 ユニマットキャラバン 828,745 1.18 35
12 シンジ―ジャパン 752,353 1.08 3
13 コーヒー乃川島 737,736 1.05 27
14 コブロ 528,837 0.76 3
15 日本生活協同組合連合会 362,777 0.52 8
16 キョーワズ珈琲 323,199 0.46 17
17 ドトールコーヒー 317,636 0.45 5
18 コーヒー・ワークス宮の森珈琲 288,811 0.41 22
19 共栄フーズ 287,721 0.41 9
20 ユニカフェ 257,148 0.37 14
21 日本流通産業 228,099 0.33 4
22 ワールドコーヒー 196,209 0.28 6
23 美鈴コーヒー 181,413 0.26 6
24 銀座コーヒー 160,415 0.23 4
25 ウエシマコーヒー 122,497 0.18 14
26 不明 117,203 0.17 14
27 三本コーヒー 114,045 0.16 16
28 ハマヤ 112,544 0.16 12
29 全国農業協同組合連合会 107,890 0.15 4
30 成城石井 106,380 0.15 6
31 チモトコーヒー 104,789 0.15 8
32 honu加藤珈琲店 84,073 0.12 2
33 宮田屋珈琲 79,464 0.11 2
34 ビッグ・エー 79,389 0.11 2
35 山本珈琲 76,986 0.11 5
36 高尾珈琲 72,991 0.1 4
37 サッポロウエシマコーヒー 57,338 0.08 6
38 加藤産業 41,356 0.06 2
39 神戸はいから食品本舗 40,140 0.06 5
40 森永乳業 39,427 0.06 2
41 八社会 34,894 0.05 2
42 ロイズコーヒーユニオン 34,405 0.05 5
43 アイジェイビーフーズ 27,316 0.04 1
44 珈房サッポロ珈琲館 26,534 0.04 4
45 第一コーヒー 23,142 0.03 2
46 コクテール堂 18,028 0.03 9
47 むそう商事 14,915 0.02 2
48 麻布タカノ 13,230 0.02 3
49 湘南珈琲 13,060 0.02 2
50 進和珈琲 5,742 0.01 2
51 iファミリー 5,056 0.01 2
52 澤井珈琲 4,410 0.01 1
53 ユーシーシーフーヅサプライ 2,054 0 1
54 フェアトレードカンパニー 1,550 0 1
55 神戸珈琲 1,135 0 2
56 珈琲実験室 1,045 0 2
57 バリューネクス 998 0 1
58 エム・シー・フーズ 408 0 1
69,967,799 100 555
資料)KSP-POSデータ(2012年12月)をもとに作成


上の表10、図19、図20はPOSデータを参考とし表したものである。月別の売り上げでは12月が1番高くて69,967,799円、1番低い月は8月で41,239,894円となっている。この売上の差は季節によるものであると考えられる。そのため、暑い季節は売り上げ金額が低く、寒い季節は売上が高い。本研究に用いたPOSデータは1年(2012年)で一番売り上げが高かった12月のデータを参考にした。

市場シェアトップとなっているのがUCC上島コーヒーで2千万円越の規模を有しておりシェア率は約30%、製品数も断トツに多い62の製品数を販売している。2位の味の素ゼネラルフーズ、3位のキーコーヒーも大きなシェアを持っており、これら上位3社で全体の70%のシェアを占めており家庭用レギュラーコーヒー市場は寡占市場となっている。

また、日本のコーヒーの製品の種類の多さは世界一とされている。産地名の単品の豆やブレンドしたもの、更に包装形態も多様で製品の種類は約600種類以上存在している。例として個人消費量で日本の2倍以上のコーヒーを飲んでいるドイツを例に挙げてみると、大手焙煎業者が小売店で販売している製品数は1桁代の数で、消費者はなじみの店で同じ商品を買っていく傾向が強い。新商品に目が行くことは少なく同じ味のコーヒーを長期的に飲み続けるため、生産者側もコストをかけて商品の種類を増やす必要が無く安定した持続的発展を遂げている。

それに対し日本ではトップメーカーの製品販売数は悠々の2桁台である。実際に上のデータからは、シェアがトップのUCC上島コーヒーの2013年1月の全国で販売された製品数は62品となっている。2位以下のメーカーでも2桁の製品数を販売していることが分かる。したがって、日本市場の製品数はとても多いことになる。

シェアが1%未満のメーカー数は45で、全体の6.7%となっている。中小メーカーの数が多いことも日本市場の特質と言える。

我が国では新鮮なものを求める消費者が多いため、生産者側も製品数が多いことに加え品質管理にコストがかかり結果的に商品の価格も上がってしまう。そのため、先にも述べたように焙煎豆小売価格の上昇に繋がる。更に製品差別化による競争が激しくこの製品の多様性が2章で述べたように日本のコーヒー消費量を増加させる要因である。  

製品数が多いことには日本の文化的な背景も関わっているのではないかと考えられる。 製品数が多いことは、何でも購買対象にしたり、商品購買時において購買対象となる選択肢が多くなければ消費者は満足感が得られないといった日本人消費者に応じた戦略をメーカー側が立てているのである。消費者が何でも購買対象にしたり、選択肢が多くなければ満足しないといったことは、日本の古い歴史からみられてきたものである。元々は平安時代菅原道真が和魂漢才を唱えて中国から多くの文化を積極的に取り入れたことに始まる。そして、明治維新では和魂洋才という考えから西洋から多くの文化を取り入れた。その結果、今日の日本にはお正月もあればクリスマスもあり、食に関してもイタリアン、フレンチ、中華といった色々なものが普通に食べられるようになっている。何でも取り入れようという選択肢に規範が無いことは過去の長い歴史から続いてきた考えであり、本研究で言えば、この考えがコーヒー市場にも存在しており製品数が多いことに繋がっているのではないかと考えられる。

 

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*1:※4 辻村英之(2009)「美味しいコーヒーの経済論」より引用